アスベスト(石綿)に関する主な法令に「大気汚染防止法」があります。
大気汚染防止法の改正により、2021年(令和3年)から3回に分けて、毎年、段階的に施行されております。
このページでは、アスベストに関する法改正で変更された点、追加された規制についてわかりやすく解説していきます。
- 改正大気汚染防止法の変更点・追加事項
- 2021年から2024年までの法改正による施行内容
このページはこんな方におすすめです!
・アスベストに関する法改正について最近知った。
・法改正によって何が変わったのかを知りたい。
2023年(令和5年)10月1日から、有資格者による、アスベストの事前調査・分析が義務化されました。
詳しくは下記の記事をご確認ください。
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詳しくは下記のページをご確認ください。
アスベストとは
アスベスト(石綿)は天然の鉱物繊維の総称で、耐摩擦性、耐熱性などに優れているため、その多くが建材製品に使用されてきました。
アスベストの繊維は非常に細かく(髪の毛の5000分の1の太さ)、人の肺に入ることで肺がんや悪性中皮種などの病気を引き起こす原因になると言われております。
そのため解体等工事の前には建材のアスベストの有無を調査し、アスベスト(石綿)がある建築物などを工事する場合は必要となる対策を講じることが、法律で義務付けられております。
2021年(令和3年)法改正|レベル3建材も規制対象へ追加など
改正大気汚染防止法は2021年(令和3年)4月1日に施行されました。
「工事前」、「工事中」、「工事完了後」の全ての段階で規制が強化(追加)されました。
少し項目が多いですが、下記に改正点について記載します。
改正点は工事前が3つ、工事中が4つ、工事完了後が3つです。
ほとんどが新たに追加された規制です。
【工事前】アスベスト事前調査の方法の法定化等
- アスベスト事前調査の方法の法定化 新設
アスベスト事前調査の方法が明示されました。
建築物などの解体等工事をする前には、原則、設計図書などの「書面調査」と現地確認の「目視調査」を行う必要があります。※1
また、アスベスト含有の有無が不明な場合は、建材を採取し、「分析調査」が必要です。※2
※1 工事対象の建築物等が2006年(平成18年)9月1日以降に着工したことを書面で確認できた場合は、目視調査以降は不要となります。(着工年を確認するだけで事前調査完了)
※2 アスベストがあるとみなして(石綿含有みなし)、分析調査を省略することもできます。
例外として、アスベストの事前調査が不要な場合があります。
詳しくは下記の記事をご確認ください。
事前調査に必要となるアスベストの分析方法については下記の記事をご確認ください。
- アスベスト事前調査結果の記録の作成と3年間の保存 新設
アスベストの事前調査の結果をまとめ、3年間保存することが新たに義務付けられました。 - 作業計画の作成 新設
石綿含有建材の除去等工事(特定工事)の際に作業計画を作成することが新たに義務付けられました。
全てのレベル(レベル1、レベル2、レベル3)で作成する必要があります。※3
※3 レベル1建材、レベル2建材の特定工事の場合は、工事の14日前に行政へ提出する「特定粉じん排出等作業実施届出書」を作成することで、作業計画を作成したことになるため、別途作成は不要です。
レベルの分類 | 建材の種類 | 飛散性 (石綿の飛びやすさ) | 主な使用箇所 |
---|---|---|---|
レベル1 | 石綿含有吹付け材 | 著しく高い | 建築基準法の耐火建築物などのはり、柱など |
レベル2 | 石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材 | 高い | ボイラ本体及びその配管、空調ダクトなど |
レベル3 | その他の石綿含有建材(成形板等) | 比較的低い | 建築物の天井、壁、床など |
レベルとは石綿含有建材を破砕や切断時における、アスベスト(石綿)の飛散のしやすさを表しています。
レベル1の石綿含有吹付け材が最も飛散しやすく、最も危険度が高いです。
レベル3の石綿含有成形板等は石綿が建材に練り込まれ、固定されているため比較的飛散しにくいと言われております。
【工事中】レベル3建材を規制対象へ追加等
- レベル3建材も規制対象へ追加 追加
改正前は、レベル1建材、レベル2建材のみが規制対象でした。
改正後は、レベル3建材も規制対象へ追加されました。 - レベル3建材の除去時における作業基準の新設 新設
レベル3建材が規制対象に追加されたことで、除去時の作業基準も明示されました。 - 石綿(アスベスト)含有仕上塗材をレベル1からレベル3へ変更(規制緩和)変更
改正前は石綿(アスベスト)含有仕上塗材はレベル1建材でしたが、改正後はレベル3建材へ変更となりました。
石綿(アスベスト)含有仕上塗材は除去方法によっては石綿が多く飛散する可能性があるため、他のレベル3建材(石綿含有成形板等)とは別の作業基準が明示されました。 - 直接罰の創設 新設
改正後は作業基準の違反者に対して、行政命令を行わずに、3か月以下の懲役又は30万円以下の罰金(直接罰)が科せられるようになりました。
改正前はレベル1、レベル2の除去工事の際、作業基準の違反者に対して行政命令を行い、その命令にも違反した場合に罰則が科せられていました。
※元請業者だけでなく、下請け業者も直接罰の対象となります。
【工事完了後】特定粉じん排出等作業の記録の作成・3年間の保存等
- 有資格者による作業完了後の確認 新設
石綿作業主任者等の「知識を有する者」によるアスベスト(石綿)含有建材の取り残しの有無を確認することが必要になりました。 - 特定粉じん排出等作業の記録の作成・3年間の保存 新設
特定粉じん排出等作業とは、石綿を含有する建築物等を解体、改造、補修する作業のことを指します。
アスベスト除去工事の作業記録の作成と3年間の保存が新たに義務付けられました。 - 発注者へ作業完了の報告・報告書面の3年間の保存 新設
アスベスト除去工事完了後に作業実施状況の概要などを発注者へ報告、その報告書面を3年間保存することが新たに義務付けられました。
以上が、2021年4月1日から新たに義務化された内容となります。
2022年(令和4年)法改正|アスベスト事前調査結果の報告の義務化
2022年(令和4年)4月1日からはアスベスト事前調査結果の報告が義務化されました。
報告対象の工事内容は解体工事だけでなく、改修工事(リフォームやリノベーション等)も該当します。
【工事前】アスベスト事前調査の行政報告の義務化
- アスベスト事前調査結果の「報告」の義務化 新設
2022年(令和4年)4月1日から、アスベストの事前調査結果を行政へ報告することが義務付けられました。
原則、石綿事前調査結果報告システムから電子申請で報告する必要があります。
今回新設されたアスベスト事前調査結果の報告は、石綿含有成形板等(レベル3)も対象となっていることに注意が必要です。
アスベスト除去工事に必要な届け出は、下記の記事をご確認ください。
2023年最新版で、報告書の様式も全てあります。
2023年(令和5年)法改正|有資格者によるアスベスト事前調査・分析の義務化
2023年(令和5年)10月1日からは、アスベストの事前調査や分析を実施するための資格要件が設けられます。
アスベストの事前調査をする場合、主に「石綿含有建材調査者」の資格が必要になります。
【工事前】アスベスト事前調査・分析の資格要件を新設
- 有資格者によるアスベスト事前調査・分析を義務化 新設
2022年現在は建築物のアスベスト事前調査や分析に必須の資格はありませんが、2023年10月1日からは有資格者でなければ建築物のアスベスト事前調査やアスベストの分析が行えなくなりました。
法改正前 | 法 | 改正後
---|---|
必須の資格なし※1 ※1 法改正前においても、資格者等がアスベストの事前調査を行うことが望ましいとされています。 | 石綿含有建材調査者 (一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている方※2 ※2 登録した日が令和5年(2023年)9月30日以前であり、アスベスト事前調査をする際も引き続き登録していることが必要です。 |
お早めにアスベスト事前調査に必要な資格を取得されることをお勧めします。
アスベストの見分け方
アスベスト(石綿)含有建材の95%以上がレベル3建材となります。
レベル3建材をいかに見分けるかがアスベスト事前調査では重要です。
石綿含有建材の見分け方をわかりやすくまとめました。
詳細は下記の記事をご確認ください。
まとめ
今回のアスベスト法改正で、工事前、工事中、工事完了後の全てのフェーズで規制が強化されました。
特に、2022年4月1日からスタートしたアスベスト事前調査結果の報告は、多くの解体工事や改修工事(リフォームやリノベーション等)で必要となります。
また、2023年10月1日からは、無資格での建築物のアスベスト事前調査が禁止となりました。
今後もアスベストに関する規制は強化されていくことが予想されます。
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